バランススコアカード(BSC)は経営戦略を展開するツールとして1990年代から広く使われて成果を上げています。戦略立案からスコアシートを作成する方法を具体的な例を挙げて紹介します。バランススコアカードの考え方は古いという意見もありますが、わかりやすい4つの視点で経営のバランスを考えて、それぞれのKPIやアクションプランまで落とし込んでいける点で現代でも管理方法・考え方としてとても有用だと思います!
バランススコアカードとは
バランススコアカード(BSC)は、1992年にキャプランとノートンが開発した、企業の経営戦略を展開する道具として、4つの視点に分け観察するツールです。
企業や組織の戦略を、①財務の視点、②顧客の視点、③業務プロセスの視点、④学習と成長の視点の4つに分解し、各々の戦略目標を達成するために不可欠な重要成功要因(KFS:Key Factor for Success)を定め、さらに重要成功要因を達成するために定量的な数値目標である重要業績評価指標(KPI)を設定して進捗を管理・フォローアップします。
バランススコアカードの4つの視点
バランススコアカードの特徴は、目標と業績評価に対し戦略目標を4つの視点で捉え、多面的な業績評価指標に落とし込んで評価することです。
財務の視点
バランススコアカードの財務の視点とは、「財務的業績の向上のために、株主に対しどのように行動すべきか」というものです。
重要業績評価指標(KPI)には、売上高、利益、EVA(経済付加価値)、ROE(株主資本利益率)それらの重要業績評価指標(KPI)の構成要素である売上高利益率、資本回転率などが挙げられます。
顧客の視点
バランススコアカードの顧客の視点とは、「戦略を達成するために、顧客に対しどのように行動すべきか」という視点です。
重要業績評価指標(KPI)には、顧客満足度、顧客定着率や対象市場におけるマーケットシェア(市場占有率)、新規顧客獲得数、クレーム発生率などが挙げられます。
業務プロセスの視点
バランススコアカードの業務プロセスの視点とは、「株主と顧客を満足させるために、どのような業務プロセスに秀でることが求められているか」という視点です。
学習と成長の視点
バランススコアカードの学習と成長の視点とは、「戦略を達成するために、どのようにして変化と改善のできる能力や環境を維持するか」という視点です。
重要業績評価指標(KPI)には、資格保有率、従業員満足度、新技術開発数、特許出願数などの社員の能力開発や会社全体の知的資産がどれだけ蓄積されたかを表します。 学習と成長の視点で注意点は、目標設定においてその年度の実績に直接影響をするものは少なく、人材への投資や組織の活性化といった中長期的に業績へ影響していくことを期待する指標が中心になるということです。
バランススコアカードの戦略立案の作成手順
バランススコアカードを用いた戦略立案は次のような手順で行います。
- ビジョンと戦略目標の策定
- 戦略マップの作成
- 重要成功要因の明確化
- 業績評価指標(KPI)と数値目標(KGI)の設定
- アクションプランの作成
- 管理とフォローアップ
スコアカード作成方法の具体例
バランススコアカードの最も核なる部分が、「スコアカード」です。スコアカードでは、事業戦略のビジョンから要因を決め、さらに数値目標を設定し、目標設定のためのアクションに落とし込んでいきます。以下はざっくりとスコアカードを作る例です。実際に事業を行うにあたっては、経営者間で議論を深め、もっと詳細なパワーバランスを考え、目標や部門のアクションプランを定めた方がよいです。
ビジョンと戦略目標 | 重要成功要因 | 重要業績評価指標 | アクションプラン | |
財務 | 収益向上
利益率向上 |
新商品の売り上げ増加
コスパの良い集客 |
新商品売上高 1,000万円
1件顧客獲得コスト 10万円 |
見込み客へ新規商品提案
マーケティング手法見直し |
顧客 | 顧客満足度向上
継続顧客の増加 |
接客向上
アフターケア徹底 |
接客満足度 評価4.0以上
購入後顧客連絡 90%以上 |
アンケート実施、フィードバック
積極的アフターケア |
業務プロセス | 新規事業開発
業務工程効率化 顧客管理システムの改善 |
見込み高い新規事業の選定
既存サービス見直し 見込み顧客の掘り起こし |
新規事業受注率 20%以上
既存サービス受注率 35%以上 リードからの顧客化 50件 |
新規事業の説明資料強化
既存サービス接点増加、営業強化 説明会、ナーチャリング、試供品 |
学習と成長 | 社員教育
従業員満足 |
社員研修の促進
業務支援ツール |
社員研修実施 月1回以上
時間外労働 月15時間削減 |
従業員の求める研修実施
事務作業支援ツール導入 |
バランススコアカードは古い?事業戦略や目標管理は他のツールも共通
バランススコアシートは、1990年代に世界的に注目されて企業や組織の事業戦略に役立てられてきたツール(考え方)ですが、現代でもその要素は引き継がれています。
企業の戦略を立て、目標を管理する中ではKPI(Key Performance Indicator)の設定は現在も多くの企業で取り入れられている他、会社が定める目標とその会社で働く社員の目標を紐付ける目標管理方法であるOKR(Objectives and Key Results)や、目標と評価を結び付けたMBO(Management by Objectives)などがあり、参考にされています。
OKRやMBOなども共通していますが、企業や組織が求める戦略から個人目標までを一貫性のあるものとしてとらえ、わかりやすく振り返りしやすい指標などで表しています。
バランススコアシートは、わかりやすい4つの視点のバランスを考えて、それぞれのKPIやアクションプランまで落とし込んでいける点で現代でも管理方法・考え方としてとても有用であると考えます!ツールは使い方次第ですし、基本的な使い方を参考にしてそれぞれの組織・企業の項目や抽象度にアレンジして使えばOKです。