営業、セールスの仕事というと、「性格が社交的で、積極的で、押しの強い人が向いている仕事で自分には無理」だと考える人も多いことかと思いますが、実は聞き上手にヒアリングできることがそれ以上に大切です。
もっと言えば、口数が少なくて、社交的でない方でも多くの方が営業マン・セールスマンとして成功しています。
元気で積極的で社交的なセールスマンも多いですし、そういう方たちは話していて気持ちがいいし、好感が持てますが、それだけがすべてではありません。
成功しているセールスマンの多くに共通しているのは、「ヒアリング」の技術を身につけているという点です。
今回は、「ヒアリングとは何か?」「なぜ、ヒアリングが重要なのか?」を中心にご紹介させていただきます。
「ヒアリング」とは何か?
「ヒアリング」というのは、英語の意味通り聞く能力(Hearing)のことです。
人間の会話は、「話すこと」(Speaking)と「聞くこと」(Hearing)で成り立っていますが、セールスマンとして成功するためには、「話すこと」よりも「聞くこと」の方が重要である場合も多くあります。
「ヒアリング」する態度は、相手との関係性によっても都度、変わってきます。
関係が近ければ、気軽に聞けるでしょうし、初対面では、お互いのことを知らないため、相手に警戒されることもあり、「聞く」というニュアンスよりも「相手から答えを引き出せるようにする。」という場合も多いことでしょう。
なぜ「ヒアリング」が大切なのか?
ヒアリングが大切な理由をひとことで言うと、相手が求めるニーズ(Needs)は、常に買い手側(客側)にあるためです。
ここで、例をあげてご説明しましょう。
(質問)次の状況であなたならどうしますか?
・状況:
「あなたは、旅行会社の社員です。あなたの会社では、【1月1日出発のハワイ旅行 豪華ホテル・オーシャンビューに泊まる7日間】
のツアーを企画して新聞にも広告を載せました。
キャンペーン商品で価格も非常にお値打ち。社内でもこの商品の販売に力を入れています。
そこへ新婚旅行を計画しているカップルがあなたの店を訪れます。
1)出発希望日は、1月1日で企画したツアーにも合っています。
2)しかし、旅行の予定期間は6日間で、コンドミニアムでのステイが希望です。
*あなたの会社では、通常商品としてコンドミニアムの手配もできます。
客のニーズは何か?
上記の場合の客のニーズは、次の三つの項目です。
① 1月1日出発 ハワイ行き
② 滞在期間6日
③ 宿泊場所はコンドミニアム
ヒアリングが大切な理由
あなたは、お客さんの3つのニーズを知ったからこそ、ハワイ向けの6日間のツアーについてアドバイスすることができるのです。
話を前に進め具体的な話に入るためには、
・「いつから、いつまでの旅行を計画しているのか」(期間)
・「どこへ行きたいのか」(場所)
・「その場所へ行ってどうしたいのか」(目的)
を最初に「ヒアリング」しておくことが重要なことなのです。
ポイント
あなたの会社が仮にキャンペーン商品を持っていたとしても、客の宿泊希望は、コンドミニアム使用で、希望滞在期間も客のニーズに合いません。
このようにニーズというのは、お客さん(買手)の都合や抱えている状況で決定されるもので、客のニーズに合った物品やサービスを提供することが基本です。
客の「サイン」を見逃すな!
営業で見逃さない第1のサイン
あなたは、手元にあるパンフレットの中から「ハワイのコンドミニアム」の頁をお客さんに見せることでしょう。
そして、価格を見たお客さんが「えー、こんなに高いの?」と思わず言ったとします。
これは新たな客のニーズであり、「もう少し安く旅行したい。」というサインです。
第1のサインに対してのあなたの反応は?
このサインに対して、あなたは、いくつかの適切な反応をすることができます。
・ランクを落としたコンドミニアム宿泊時の料金を案内するかもしれませんし、
・コンドミニアムとの比較でホテルタイプの旅行代金を案内するかもしれません。
第2のサイン
それに対して、客の女性が男性に「ホテルもいいよね。」と言ったとします。
ここで、あなたは、次のような提案をしてもいいですね。
第2のサインに対してのあなたの反応は?
「実は、この時期、ホテル宿泊のキャンペーン商品があります。しかし、旅行期間が7日間です。 もう1日帰国日を延ばすことは可能ですか?」
と提案してもよいかもしれません。
ポイント
お客さんと会話する中では、雑談の場合であっても、相手側の意向や方向性や趣向や状況が語られる場合も多いです。
そのサインが出たら、お客さんのニーズに沿った提案をしてみて、徐々にどの条件が優先するのかを絞るようにしていくと、きっと、あなたの商談もうまくいくことでしょう。
どんなヒアリングのしかたをすると効果的なのか?
会話の主語は誰にすべきか?
ニーズを持っているのは客側であり、あなたは必要なニーズを聞き出す必要があるので、やはり、「お客様は・・・」や「御社では・・・」のように相手を主語にして会話するようにすると話がスムーズに進んでいくものです。
また、客側も適切な要望を聞いてもらえることを期待している場合も多いです。
聞くべき項目は何?
多くの場合、セールスマンたちは、相手先とアポを取った後、頭の中で自然に「何を聞くべきなのか?」と「何を伝えるべきなのか?」を絶えず考えています。
また、訪問先がどのような相手なのか,何をしている会社なのか事前に調べることもします。
業種によって内容は異なるかもしれませんが、最初に相手に会った際に「尋ねるべき項目」や「話しておくべき項目」が決まっている場合もあります。
それらの項目を重要性が高い順番で整理しておくと、言い忘れが少なくなり、落ち着いた態度で相手と接することができます。
競合相手の名前が出てきたらどうすればいいのか?
人は誰でも、自分の経験をベースに話をするものです。どの業界で働いていても、競合相手の名前が出る場合がひんぱんに出てきます。
例えば、旅行会社のカウンターで接客していても
「前回、旅行に行ったときはB社で行ったのですが、とてもよかったです。」などなど。
そんな時は、こんな風に答えてください。
「そうですね。B社もいいですね。」
「も」をつける点がポイントです。
「も」をつけることで、自社が良いことは相手に十分伝わりますし、客側も自分の過去の経験を率直に語っているだけで、相手の価値観を尊重するセールスマンの方が信頼できる印象になります。
まとめ
「ヒアリング」というのは聞く能力のことです。
「ヒアリング」が大切な理由は、ニーズは常に買い手側にあるためです。
商談をうまく進めていくのには、相手のニーズを聞き出すことが必要なのです。
相手が意向や方向性や趣向や状況が語られた場合に、それをサインとみなして客のニーズに沿った提案をするようにしましょう。
やはり、会話、商談時には、相手側を主語にして話をするようにするとスムーズにいきます。
また、相手に「聞くべき点」、「伝えるべき点」は事前に準備しておいて、その中でも優先順位を決めておくことをおすすめします。
もう1点、競合相手が話題になった場合も「XX社もいいですね。」と答えるように習慣づけしておくといいですね。